2014年6月24日火曜日

エラールとプレイエルの違いについての考察 その2

1907年製エラール
 
1905年製プレイエル
 
エラールとプレイエルの目指した音の違いについて
 
エラールは、「オーケストラの響き」をピアノで実現しようとしていました。
また、フォルテピアノからの流れを受け継ぐ音、つまり一つ一つの音がはっきりしていて明るく、音量を増やすよりも木の響きの美しさを大切にしていました。
それが、エラールが平行弦のピアノにこだわり続けた理由です。
低音から高音まで同じ音色ではなく変化に富むこと、それでいてまとまりはなければならない、とエラールは考えていました。
まさにオーケストラです。
今回私は1907年製のエラールを修復しましたが、最初に音を出した時、低音の音の伸びに感動しました。
低音が朗々と歌うのです。コントラバスの音のように聞こえます。
高音が美しく歌うプレイエルとは対照的だと思いました。
エラールの高音は歌うというより、コロコロとしていて飾っている感じです。
また、低音から高音まで音色は確かに変化しているのですが、ばらばらな感じは全くせず違和感がありません。
これがエラールの目指した「オーケストラ」か、と思いました。

プレイエルは、創始者もその息子も作曲家であり演奏家でしたので、家具職人の家に生まれ楽器職人となったエラールとは出発点が違います。
目指す音の違いも、そこに起源があるように私は思っています。
カミーユ・プレイエルの親しい友人だったショパンやその他の音楽家たちからも強い要求があったでしょう。
もっと歌いたい、もっと歌ってほしい、という気持ちがピアノ作りに反映され、ロマンティックな感情表現のできるピアノとなりました。
明るくクリアーで迷いのない音色のエラールとは違い、丸みがありしっとりとしていて、明るく歌う背景には暗さや深い色も備えられているし揺れもある、
それが何ともいえない魅力となったピアノがプレイエルです。
世界を大きく捉えて音楽家の表現を支えようとしたエラールとは異なり、プレイエルは人間感情に近いピアノを作ろうとしたのではないか、と私には思われます。

続く。

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